あなたは、自分の人生を、まるでロールプレイングゲームのようだと思ったことはありませんか。
つまり、ゲームの主人公として、あなたがこの世界に生まれた、ということです。
あなたは勇者であり、あなたの一挙手一投足が、ゲームの進行に深く影響しています。
間違った選択は命取りですから、できるだけ慎重に、あなたは進んでいくことになります。
あなたの目的は、自分の生きる意味を探す旅であり、ひとつの目標に向かう旅であり、自己実現の旅です。
社会という平野にでたあなたは、冒険者としてはまだ未熟ですから、経験値を稼ぐため、モンスターと戦うことになります。
勇者であるあなたの前には、次から次へとモンスターが現れます。
ときには自分よりも強いモンスターに立ち向かい、返り討ちにあうこともあります。
ですが、悪いことばかりではありません。
とあるダンジョンで、宝箱を見つけて喜んだり、信頼できる仲間を見つけたりなど、いいこともあります。
そうしてあなたは、人生という名のゲームに夢中になります。
いいことと悪いことが交互に起きるため、いつまでたっても飽きることがありません。
そうして、人生という果てしない旅を続けているうちに、うまいこと魔王を倒してハッピーエンド、といきたいところですが、そう簡単にはいきません。
次々と襲いかかる試練の連続に、勇者であるあなたは、次第に疲弊していきます。
どうして自分には、こんなにも困難ばかりがやってくるのか、と悩むことになります。
ですが、それは仕方のないことなのです。
なぜなら、あなたがゲームの主人公であり、勇者なのですから、色々な出来事が主人公に起こらないとゲームが面白くならないのです。
もしも、主人公のあなたが最強であり、魔王も一撃で倒せて、なにをやってもうまくいってしまうと、ゲームを遊んでいる人にとっては、面白くもなんともないのです。
もちろん、主人公であるあなたも、なにをやってもうまくいってしまうというのは、最初は面白くても、次第につまらなく感じてくるでしょうから、超えるべき障害を設けることは、ゲームに必要なことなのです。
つまり、あなたが勇者であり、ゲームの主人公という立場だからこそ、無理難題や困難が、あなたの身に降り注いでいた、というわけです。
それに気づいたあなたは、なんで自分は勇者に生まれてしまったんだ、と嘆くかもしれません。
そして、もうこんなゲームやめてやる、と思って、ゲームのリセットボタンに手を伸ばしたくなるかもしれません。
もうゲームをやめたい、と思ったのであれば、リセットボタンを押すのではなく、モブとしての人生をスタートしてみてください。
自分の人生の主人公である勇者からモブへと、転職するのです。
モブというのは、その他大勢のキャラのことであり、映画でいえばエキストラです。
あなたは、あなたの人生の主人公から、そのへんを歩いている、名もない通行人に、役割を変えるのです。
そうして、主人公の座から降りたあなたは、モブとしての人生をスタートさせます。
モブは、ゲームの中には、いてもいなくてもいい存在ですから、勇者のように、やらないといけないこともありません。
やりたくないことは、やらなくていいのです。
あなたがやらなくても、モブの代わりなどいくらでもいるのです。
そして、今までやりたかったけど、挑戦することがこわいな、と思っていたことがあるのなら、思い切ってやってみてください。
もし失敗したとしても大丈夫です。
なぜならあなたはモブなのですから、モブが失敗しようがしまいが、ゲームの進行には、なんの影響もありません。
そうしてあなたは、あなたの人生の主人公ではなく、モブとして、今までやりたくなかったことをやらなくなり、今までやりたかったことをやるようになります。
今まで慎重に冒険をしていたあなたですが、モブになったことで、大胆に行動を起こすかもしれません。
モブとしての自分が世界に与える影響なんて、大したことなどない、という事実によって、行動することが楽しくなるかもしれません。
もしくは、冒険するよりも、遊ぶことが肌にあっているのなら、遊び人のように、遊びを極めることに夢中になるかもしれません。
いずれにせよ、主人公の重圧から開放されて、楽しい人生になるでしょう。
ときには、モブであるあなたの前にも、問題が降り掛かってくることがあるかもしれません。
ですが、あなたがモブである限り、大した問題など起きるはずがありません。
モブの問題なんて、世界全体から見てみれば、あってないようなものです。
次第にあなたは、モブとしての人生を楽しむようになり、この世界もそんなに悪くないかな、と思うようになるでしょう。
あなたが主人公でいることに疲れたのであれば、モブとして、気楽にゲームを楽しんでみるというのも、ひとつの方法ではないでしょうか。